「薪ストーブのある家に住みたい」。
昔から抱いていた夢を、幸いにもイギリスで実現することが出来ました。薪ストーブは、セントラルヒーティングよりもずっと暖かいし、何より揺れる炎を見ていると、とても心が落ち着いてくるのです。
しかし、環境のことを考えると、木を燃やすことで熱量を得ているこの薪ストーブ、大丈夫なのかしら…と気になり始めました。
薪ストーブはカーボンニュートラル
木は、CO2を吸収するため、温暖化防止に貢献しているのはよく知られています。しかし、薪を燃やすと、木の中に閉じ込められていたCO2が大気中に放出されてしまいます。
木が一生の間に取り込んだCO2の量と、薪として燃やした時に放出されるCO2の量はほぼ同じとされています。つまり、薪ストーブを使うことはCO2の増減に関してはプラマイゼロ、つまりカーボンニュートラルだと考えられています。

特に、寿命や大風などで倒れた木や、健康な森を保つために間伐(かんばつ・木立の間に日光が差し込むように、定期的に木を間引きすること)された木を使うことは、エコと言えます。
なぜなら、倒木は放っておけば朽ち果てていき、その過程で大気中にCO2を放出していくからです。また、間伐をしなければ、木は光合成が出来なくなり、森全体が窒息死してしまうからです。それならば、無為に大気中にCO2を放出するよりも、エネルギーとして使ったほうがずっとエコだというわけです。

しかし、気を付けなくてはいけないのは薪の調達先。地元の森林から調達されたものならカーボンニュートラルでも、遠隔地や外国から船やトラックで搬送されたものならば当然エコフレンドリーとは言えません。
クッキングでも重宝する薪ストーブ

また、薪ストーブはクッキングでも大活躍します。特にじっくりコトコト調理したいシチューや、お豆を煮るには最適なのです。ガス代が節約できるのはもちろんですが、味もずっとまろやかで美味しくなるのが嬉しいところ。
また、やかんを乗せておけば、いつもでお茶が飲めますし、乾燥対策にもなります。
薪ストーブの問題点
このように、薪ストーブはエコフレンドリーなため、 実際、イギリスでは薪ストーブの使用が奨励されているほどです。特に郊外では薪ストーブ設置に際して行政から助成金が出ることも珍しくありません。
しかし、都市部では問題もあります。それは大気汚染です。グリーンピースとガーディアンの調査(2017年)によると、近年イングランドとウェールズでは大気汚染が深刻化しており、薪ストーブの人気がその一因となっているというのです。
特に煙突から流れ出る、PM2.5の問題は深刻です。そこで、政府は法令(Clean Air Strategy)により、都市部の薪ストーブの使用に対して規制を設けることにしました。具体的には、次のようなことです。
・有害な煙をカットする政府に認可された薪ストーブを使用すること
・湿度が20%以下の薪を使用すること
私の住むエディンバラも、この規制対象都市となっています。また、十分に乾燥していない薪を使うと煙の量が増えるので、薪の湿度にはとても気を付けています。
自然と共生する薪ストーブの在り方
日本では、1950~60年代に国の政策で杉の植林が大々的に行われました。(そのために、スギ花粉で悩まされる人が多くいます。)しかし、管理する人が少なくなった日本の森は死にかけているそうです。

またせっかっく間伐した木材も、使いみちがあまりなく困っていると言います。そういった意味で、日本の里山では自然と共生した形で上手に薪ストーブを使うことができるように思います。しかし、大気汚染は無視できない問題なので、煙を出しにくい薪ストーブを選ぶことはとても大事です。
そもそも、薪ストーブを使いたいという人は、自然を近くに感じたいという思いがあるのではないでしょうか?しかし、自然を愛すると言いながら環境のことを顧みず、自分のし好や趣味を優先させてしまう誘惑や落とし穴は意外と誰にでもあるように思います。真に自然を愛するならば、自然と共生する薪ストーブの在り方を目指していきたいものです。
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