低く垂れこめた雲からかすかに日が差し込む、六月-八ヶ岳。
しっとりとした梅雨のある日に訪れた、八ヶ岳のふもとにあるキッチンオハナ。植物性の材料だけを使った料理は、お腹にはもちろん心にも優しい。ベジタリアンやヴィーガンでない人からも愛される、地元の古民家カフェです。
Kitchen Ohana
以前から気になっていたこのキッチンオハナに、やっと行くことが出来ました。田植えの終わった田んぼや畑の間の田舎道を進んでいくと、見落としてしまいそうな小さな看板が出ています。

駐車スペースは2カ所ありますが、全部で7、8台分。でも、古民家を改造したお店もこじんまりとしているから、結局これくらいがちょうどいいのかもしれません。駐車スペースがあったら、それはお店に入れるという「良い知らせ」。
古いコンクリート塀の向こうには、昭和初期の趣をたたえた古民家が待っていました。どっしりとした瓦屋根、玄関を灯している古いランプ、生い茂る草木。気取らない、人のぬくもりを感じさせる古い日本家屋。

縁側で、対面してランチを頂いているお客さんの間にある、静かな空気。お店の敷居をまたぐ前に、すでに「キッチンオハナ」の雰囲気に引き込まれた私です。


土間で靴を脱ぐと、ちゃぶ台がぽつん、ぽつんと置かれた畳の間が広がっていました。そこにあるのは、仕切りがないのに、プライベートな空間。
大きな笑い声はしないのに、なんだか幸せな空気が漂っていました。BGMが流れていないのが、かえってお店らしくなく、居心地の良い静かな空間を作っているのかもしれません。
温かみのある照明や、レトロな調度品も落ち着きのある空間づくりに一役買っています。まるで昭和初期にタイムスリップしたかのような店内は、なんだか時間の流れが外と違うのです。

私たちは、土間にあるテーブル席につきました。古めかしい重厚な木のテーブルと、アンティークの椅子、それから一輪挿しに生けられた野の花の繊細な美しさに見とれてしまいました。

ヴィーガンでない人をもうならせる、絶品料理
さて、お料理を頂く前に完全にキッチンオハナ・ワールドに魅了されてしまった私ですが、肝心のお料理も期待をはるかに上回る美味しさ。会話も忘れて、一品一品を味わうことに全神経を集中させてしまった私です。

キッチンオハナの畑で取れたフキは、細いけれど春のほろ苦さがぎゅっと詰まっています。7時の方角にあるヴィーガンミートボール(?)は、オーストラリア産のグルテンと蓮根、それからなんだっけ…とにかくすごく手の込んだ一品。真似したくてレシピを教えていただいたのですが、その複雑さに途中まで聞いてお手上げだと悟りました…。
真ん中のキャベツとスパイシーなカレー風味のシチューは、玄米ご飯と一緒にいただきます。複雑な味と香りに、一口食べるだけで心が異国にひとっ飛び。思わず遥かなる「遠く」を窓の外に見やってしまった私です。
兎にも角にも、すべてのお料理が絶品でした。この日一緒に行った夫の両親は、普段はお肉を食べる人たちですが、八ヶ岳に来るたびに毎回キッチンオハナを訪れるほどのファンだそう。ベジタリアンやヴィーガンでなくても大満足というのが、頷けます。
時間のある人すべてに開かれた優しさ
お隣に座ったお客さんは、店主とのこぼれてくる会話から常連さんだと気が付きました。大半のお客さんたちは、食べ終わった後もおいしいお茶を頂きながら長居をしていました。
都会のレストランやカフェでは、食べ終わるや否や食器が下げられ、急き立てられるようにお店を出なければならない場合も少なくありません。でも、キッチンオハナではそんなせかせかした雰囲気は微塵も感じられませんでした。
ランチプレートは1日限定20食、完全予約制ということもあって、基本的にその日のテーブルはその人たちだけのものになるのかもしれません。お客さんたちは、食べるだけでなく、ゆったりとした時間を過ごしにこの場に来ているんだなあと感じました。

また、お値段もとても親切。あれだけ手の込んだ絶品ランチプレートが1350円(2020年現在)で頂けるのです。すべての人に憩いの空間を提供してくれている、店主の優しさが感じられます。

キッチンオハナの基本情報
八ヶ岳に行く機会があれば、ぜひキッチンオハナへ。
ヴィーガンでなくとも、その美味しさと居心地の良さに誰もが幸せな気分になることでしょう。
お料理がテーブルに運ばれるまでには、一般のお店より時間がかかります。でも、待つ時間も含めて、ゆったりとした時間をぜひ楽しんでみてください。
Kitchen Ohana
場所:〒408-0018 山梨県北杜市高根町村山西割1140
(ナビで検索するときは、1149で正確な住所を表示します)
営業時間:11:30~17:00
定休日:日曜日、月曜日
予約:ランチは完全予約制(当日予約可)
電話:0551-46-2177
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