11月、ロンドン。
出張の最終日。予定より早く仕事が終わったので、かねてから興味のあったヴィーガンチーズ専門店を訪れてみることにしました。
初冬の灰色の空のもと、一人スーツケースをゴロゴロ引きながら、地下鉄とバスを乗り継いてお目当てのお店にたどり着きました。
イギリス初・ヴィーガンチーズ専門店!La fauxmangrie

お店に着いた時には、もう夕暮れが近づいていました。こじんまりとした店内からは、やさしいオレンジ色の灯がもれてきます。(さて、どんなチーズが置いてあるんだろう…)期待をふくらませて店内に入ります。
小さな店内には、色々な種類の、カラフルなチーズが所狭しと並んでいます。知らずに入った人ならば、きっと街のおしゃれな普通のチーズ屋さんだと思う事でしょう。そう、この看板がなれけば…。
100% Vegan Can you brie-lieve it?!
(100% ヴィーガン。信じられますか?!)
ブリーチーズ(Brie)とかけて、’brie-lieve it?!’と文字っているところにチーズ屋さんのユーモアのセンスを感じます。(全部これがプラントベースのチーズ…?)本物のチーズさながらの力作に圧倒されてしまいました。
店員さんが、「試食してみますか?」と言って、次々に色々なチーズを下さいました。どれもこれもみな想像を上回る美味しさ!(本物のチーズとそっくり!)(いや、それ以上。)(一体どうやって?!)いろんな思いが頭の中を駆け巡りました。
実は、私、チーズが大好きだったんです。でも酪農現場の悲惨さを知るようになって、乳製品を諦めていました。正直、ワインのお供がなくなってちょっと寂しい…と思っていた矢先だったので、この100%植物から出来た極上チーズには心が躍りました。
さて、このヴィーガンチーズ。価格はどれくらいでしょうか?

ヨーロッパでは乳製品は安いので、ヴィーガンチーズは普通のチーズの倍くらいの価格です。でも、せっかくの機会だからと、4種類のチーズを買いました。試食をどんどん下さるのは、味に自信があるから。お店に足を踏み入れたお客さんは、試食をすればその美味しさに感動し、必ず買うのです。

特に美味しかったのは、一番手前の’Veganzola’(ヴィーガンゾーラ)。まさにゴルゴンゾーラのチーズそのものです! お店の一番人気の商品の一つ。

こちらは、ブリー。お豆腐が使われています。お豆腐は海外でもヴィーガンの強い味方ですね。
La Fauxmagerieの誕生
実はこのお店、今年2019年にオープンしたばかり。イギリス初のヴィーガンチーズ専門店です。ヴィーガンチーズを買うために、毎週末ロンドンまで何時間もかけて足を運んだ姉妹が、とうとう自分たちでチーズ屋さんを始めたのです。
シャルロッテ(Charlotte)はマークスアンドスペンサー(高級スーパー)で仕入れ担当として働き、レイチェル(Rachel)は自称「料理の苦手な」データサイエンスの専門家でした。レイチェルはヴィーガンになる以前、チーズが大好きで家に帰るとチーズをひと塊、全部食べてしまう程でした!
イギリスでは、プラントベースの食品が年々増加してきましたが、これまでチーズ部門だけは遅れをとっていました。あったとしても種類は少なく、味もイマイチ。そこで、この姉妹が何年間も試行錯誤を繰り返し、ついにイギリスで最もおいしいヴィーガンチーズを生み出したのです!

オープンするとたちまち話題になり、大勢の人が押しかけました。何時間もかけてやってくる人たちも珍しくありませんでした。ところが、開店1週間後にして英国酪農協会から「チーズ」という名称を使わないで欲しい、と言われたそうです。理由は、「チーズは本来乳製品であり、消費者に混乱を与える」というもの。

しかし、「チーズ」の語源をたどっていくと、それは古いヨーロッパの言語の ‘kwat’(「発酵」)からきていることが分かりました!’kwat’はそもそもは乳製品と直接関係がなかったわけです。ですから、姉妹はいまだに自分たちの商品に、「チーズ」という名称を使い続けています。
増え続けるヴィーガン
それにしても、英国酪農協会のような大きな組織が、姉妹が経営するこんな小さなチーズ屋さんをけん制するとは…。それだけ酪農団体にとってプラントベースは大きな脅威なのだ、と感じました。
調べてみると、実際にイギリスではヴィーガン人口が急増していることが分かりました。finderの統計によると、「2019年中にヴィーガンにシフトしたい」と考えているイギリス人は、現在のヴィーガン人口の3倍もいることが分かっています。潜在的にとても大きなマーケットなのです。
私が店内にいた短い時間でも、ひっきりなしにお客さんがやってきていました。みんなこの小さなお店を目指して地下鉄やバスを乗ってやって来るのです。美しくおいしいヴィーガンチーズに歓声を上げ、お気に入りのチーズを買い、幸せそうな顔で出ていく人たち。
(これだけ美味しければ、それは「脅威」となり得る…。)
不可能と思われていた100%プラントベースの美味しいチーズ。チーズ好き姉妹の情熱とそのスキルに感服しながら、私もお店を後にしました。
LA FAUXMAGERIE の基本情報

場所: 20 Cheshire St, Shoreditch, London E2 6EH
営業日:水曜日~日曜日(月・火は定休日)
ホームページ: https://lafauxmagerie.com/
*オンラインショッピングで、チーズの量り売りをやっています。
*ヴィーガンチーズ以外にも、ヴィーガンミート、ヴィーガンシーフード食品も扱っています。
第二ブログの立ち上げ、おめでとうございます!!二つのブログの管理大変そうですが、応援しています。
ヴィーガンチーズ試してみたいです。私の近郊都市でも美味しいヴィーガンチーズの専門店があるか探してみたいと思います。栄養価はどうなんでしょうか?乳製品のチーズと同じようにカルシウムなどのベネフィットはありますか?プラントベースの肉製品は栄養的にみて、牛よりも優れているところあり、もっと体に悪いところありという感じですね。
エラさま
新ブログ、「ベジコロジー」にもおいで下さりどうもありがとうございます!
栄養価。
良い所をつかれましたね。
まだ私も勉強中なのですが、作り方は実は普通の乳製品のチーズとあまり変わらないみたいなんです。
バクテリアを利用してナッツを発酵させるわけですね。
だから、一部のプラントベースの加工食品がかかえているような問題はないと思います。
これからもっと勉強して自分でヴィーガンチーズを作っていくつもりなので、またよく分かったら記事にしますね!
霧立灯